描かれている人物
二段目:「文屋(ぶんや)」
三段目左:「喜撰(きせん)」
絵の解説
どちらも舞台は小野小町の自宅で、背景は御簾です。
通しでの上演だったので、各踊りの背景は(「喜撰」と「業平」除く)無地で統一しました。
全体的な背景は、御殿の壁の叢雲模様。
「遍照(へんじょう)」僧正遍照、小野小町
小野小町は十二単ではなく、姫様の衣装で登場します。
「業平」「黒主」は十二単なのでメリハリをつけるためでしょうか。
ただ、見ず知らずの姫様に小野小町の面影を見出し、かつての恋心を思い出した老人のようにも見えます。
いずれにせよ、叶わぬ恋であり、二人の距離がその現実を示しています。
切ないです。
「文屋(ぶんや)」文屋康秀、官女柳の局、官女藤の局
官女は立役がつとめるので強面で、文屋とのやりとりが愉快です。
色好みの文屋は飄々としていて、官女の妨害も何のその。
官女の朱色の長袴が鮮やかです。
衣装は俳優さんによって異なります。
あらすじ
六歌仙容彩(ろっかせんすがたのいろどり)
主な登場人物と簡単な説明
・小野小町(おののこまち)
才色兼備の美女。
・僧正遍照(そうじょうへんじょう)
「積恋雪関扉」に登場する良峯少将宗貞が出家して高僧となった姿。
深草少将のモデルと言われている。
・文屋康秀(ぶんやのやすひで)
色好みの公家。
・在原業平(ありわらのなりひら)
絶世の美男の公家、平安時代のプレイボーイ。
・喜撰法師(きせんほうし)
宇治山の僧。祇園の遊女屋で遊びたくなって山を下りてきて、お梶を口説く。
・お梶(おかじ)
祇園の茶汲み娘
・大伴黒主(おおとものくろぬし)
天下を狙う公家
あらすじ
五人の男たちが小野小町を口説きますが、誰の恋も実らないという物語。
「遍照」長唄・竹本
遍照の老いらくの恋。小町に諭され悄然と立ち去る。
「文屋」清元
小町に会いにくるが官女たちに邪魔される。
「業平」長唄
扇尽くしの踊りを見せて小町に迫るがすげなく断られる。
「喜撰」清元・長唄
高僧の喜撰が祇園のお梶を口説いていると、宇治山のお弟子の僧たちが喜撰を迎えに来る。
喜撰は住吉踊りを弟子たちと踊り、寺へ帰る。
「大友黒主」長唄
小町を后にして謀反を企んでいる大友黒主だったが、小町に見抜かれ問い詰められる。
私のツボ
平安絵巻といえば
官女です。
緋色の長袴と白の着付のコントラストが美しい。
「妹背山」と同様に、女方と立役の官女が出てきます。
「遍照」は女方が務めるので、ごく普通の官女です。
「文屋」は立役が務めるので、いかつい官女です。
このカードを描いた時は通しでの上演で、せっかくなので各場面につき一枚用意しようかなと思っていました。
が、もともと変化舞踊で一つの作品なので、一枚にまとめました。
良い機会なので、蔵から出して参りました。
一枚ずつのカードで考えていた時に描いた文屋。
衣装は俳優さんによって変わります。
模様は肉球か鈴柄にすることが多いです。
「遍照」の女官
「文屋」の女官
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