KNPC106 猩々(しょうじょう)

かぶきねこづくし

描かれている人物

(上から)猩々、酒売り高風

絵の解説

猩々の衣装:
赤地錦の花模様の着付、水に菊模様の赤地唐織の壺折(つぼおり)、赤地に青海波模様の大口袴

*壺折(つぼおり):能の装束で女装のものが着る唐織の着方の名称

高風の衣装:
白地唐織模様の着付、白ゴザ織の大口袴、袖なしの法被

原画

小道具は大きな酒壺、赤い柄杓と盃で、それぞれ中啓を持っています。
絵には描いていませんが、猩々の中啓は黒骨百草と呼ばれるもので、四季折々の花が細やかに描きこまれています。

あらすじ

主な登場人物と簡単な説明

・猩々:海中に住むという中国の想像上の生き物。酒好き。

・酒売り高風(こうふう):親孝行な酒売

あらすじ

唐の金山の麓にある揚子の里に住む高風は、揚子の市へ行ってお酒を売ると富を得るという夢を見ます。
それに従ってお酒を売り始めた高風。
するとお告げ通りに富貴の身になりますが、お客の中に不思議な者がいて、いくらお酒を飲んでも顔の色は変わらず、平然としています。

名前を問うと、海中に住む猩々であると答え、姿を消します。
高風は酒を用意し、潯陽の江へと出かけ、猩々が現れるのを待ちます。
するとやがて猩々が姿を現し、お酒を飲んで舞を舞い始めます。

そして猩々は、高風に汲んでも尽きることのない不思議な酒壺を与え、波間に姿を消していくのでした。

私のツボ

オランウータンまたは亀の妖精

オランウータンのことを中国語で猩猩と言うので、猩々の正体はおそらく猿なのでしょうけれど、水中に棲むようなので、カワウソかもしれません。
長寿の亀の妖精という説もあり、個人的にはこの説を支持しています。
軽やかに踊ってみたい、フサフサの髪の毛が欲しい、という亀の叶わぬ願いが込められた姿かと思うと、いじましいです。
話を戻して、なんであれ、あやかしには変わりありません。

基本型は猩々一人ですが、二人の場合も多く、そこは一定ではないようです。
能楽では「七人猩々」があり、映像で見たことがありますが、これは怖かったです。
あんなのに囲まれたら酒壷置いて逃げてしまうでしょう。

「猩々」はもちろんのこと、”この世のものではない存在”の舞踊は、ふわふわっと軽い印象を受けます。
重力がかかっていないというか、体重が感じられないというか、滑るような踊りです。
しかも酒に酔っていますから、千鳥足で軽妙です。
猩々が花道を引っ込む時、ふわふわふわっと水上を渡るような歩き方をします。
水中に帰っていくようで、だから袴の模様が青海波なのかと納得しました。

視界を占める赤の比率が高い舞台で、酒壺の緑がアクセントになっています。
そんな中、高風の白が爽やかで、全体のトーンを引き締めています。
配色がよく計算された舞台だなといつも感心します。

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