描かれている人物
枠上段:鶴千代
枠下段:千松
左:乳人政岡
右:八汐
絵の解説
左:「お腹がすいてもひもじゅうない」空腹を紛らそうと雀歌を歌う千松。
右:空腹を耐える鶴千代。餌をついばむ雀を羨むほどお腹が空いています。
御簾が上がり政岡の出。手にしているのは沖の井が用意した膳。
「先代萩」の政岡といえば、の立ち姿。
背景は雀の間の襖の図柄。金地に竹雀。
政岡に睨みを効かして竹の間から一旦下がる八汐。
政岡を嵌める策略が失敗して不満げです。
背景は、竹の間の襖の図柄。銀地に緑の竹の図。
あらすじ
「伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)」前半の「御殿」まで
主な登場人物と簡単な説明
・政岡(まさおか)
鶴千代の乳母。
「片はずし」と呼ばれる武家に仕える女性の大役。
・八汐(やしお)
仁木弾正の妹。兄と共にお家乗っ取りの陰謀に加担している。
・千松(せんまつ)
政岡の子。
鶴千代と兄弟のように育てられた。
・鶴千代(つるちよ)
足利家の当主。
あらすじ
序幕 鎌倉花水橋の場
奥州の大大名・足利頼兼は仁木弾正(にっきだんじょう)らにそそのかされて放蕩三昧。
廓帰りに闇討ちにあうが、力士・絹川谷蔵が駆けつけ助けられる。
通常、ここで幕。
ごく稀に、続いて「高尾の吊斬り(つるしぎり)」が上演される。
二幕目 足利家竹の間の場
頼兼は幕府の命令で隠居、家督は幼い嫡子・鶴千代が継ぐ。
鶴千代の乳母・政岡は、鶴千代を護るため、男たちを遠ざけ、毒殺を恐れて食事の用意も自ら行う。
竹の間に、仁木弾正の妹・八汐と沖の井が見舞いに訪れる。
八汐は天井に隠れていた鳶の嘉藤次を捕え、政岡の陰謀だと謀るが、鶴千代や沖の井らによって政岡への疑いは晴れる。
八汐の策略は失敗し、引っ込みます。
三幕目 足利家御殿の場
周りに人がいなくなったので、政岡が鶴千代と千松に茶道具で食事を用意する(「飯炊き」)。
そこへ管領山名宗全の妻・栄御前が毒入りの菓子を持って見舞いに訪れ、政岡と鶴千代は八汐や沖の井らと共に出迎える。
将軍から下賜されたと称する菓子を断ることができない政岡と鶴千代。
あわやというところで千松がその菓子を食べ、菓子箱を蹴飛ばして俄に苦しみ出す。
八汐は証拠隠滅のため懐剣で千松を刺し殺す。
我が子の死に顔色ひとつ変えない政岡を見た栄御前は、政岡が千松と鶴千代を取り替えて育てたのだろうと思い込み、陰謀に加担していると勘違いする。
そして秘かに政岡に陰謀を明かし、お家横領一味の連判状を渡す。
一人になった政岡は千松の亡骸を抱きしめ、涙ながらにその忠義を誉める。
八汐は連判状を取り返そうと政岡を襲うが、かえって殺される。
そこへ大きな鼠があらわれ、連判状をくわえて逃げ出すのだった。
ー続くー
*後半の「床下」「対決」「刃傷」はKNPC100をご覧ください。
私のツボ
八汐
KNPC99で、「先代萩」前半の一番のピークを描くことができたので、満を持しての政岡の打掛。
カードの構図は同じ瞬間の絵ではありません。
鶴千代、千松、政岡は「雀の間」での様子なので、ややずれはありますが、”雀の間での様子”といえます。
この間、八汐は別室で政岡を陥れる計画を練り直しているのだろうと思います。
八汐は「加賀見山旧錦(かがみやまこきょうのにしきえ)」の岩藤に似た役どころですが、岩藤よりは位が軽いです。
北条の執権・仁木弾正の妹なので、身分は低くはありませんが現時点ではそこまでの位ではない、という立ち位置でしょうか。
「竹の間」では政岡の罪をあれこれ言い立て、やかましいので沖の井や松島にたしなめられる始末。
ここでの横暴ぶりは、とても表情が豊かで愛嬌さえも感じられます。憎たらしいですけれども。
冷静沈着な政岡と好対照です。
八汐の衣装は、着付は白綸子で、打掛の裏地は赤です。
打掛の表と帯は、俳優さんによって異なりますが、茶系の錦。
一方、政岡は緋綸子の着付。
役柄も対照的ですが、衣装も対照的な二人。
政岡の赤と、八汐の白のコントラストが美しいです。
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