描かれている人物
三浦屋揚巻(みうらやあげまき)
花川戸助六(はなかわどすけろく)
髭の意休(ひげのいきゅう)
絵の解説
意休が三浦屋から出てきたので、助六を打掛のうちにかばう揚巻。
助六は母が持ってきた紙衣(かみこ)を着ている。
助六に斬りかかろうと刀に手をかける意休。
雲龍剣山波涛文様(うんりゅう けんざん はとう もんよう)羽織・着付
赤茶の地に、金糸で五爪(ごそう)の龍と雲、火焔宝寿が刺繍されている。
裾には波と山の刺繍。
三浦屋外観。
あらすじ
役の説明
・花川戸助六 実は曽我五郎時致(はなかわどすけろく そがのごろうときむね)
花川戸の侠客。江戸一の良い男。揚巻の間夫。源氏の宝刀・友切丸(ともきりまる)を探し出すため吉原に出入りしている。
・三浦屋揚巻(みうらやあげまき)
助六の恋人で、吉原最高級の遊郭・三浦屋で一番人気の花魁。
痛快な啖呵で嫌な客をやり込める気風の良さも魅力の一つ。
・髭の意休(ひげのいきゅう)
たっぷりした白い髭が特徴のお大尽(金持ちの権力者)。
揚巻に入れ上げている。
正体は平家の残党で盗賊の平内左衛門(へいないざえもん)で、源氏打倒のために友切丸を盗んだ張本人。
あらすじ
吉原仲之町、三浦屋の格子先。
吉原一の人気花魁揚巻(あげまき)の元へは髭の意休が子分をつれて通ってきます。
助六の喧嘩沙汰を心配した母満江と白酒売りになった兄の十郎は、揚巻のところへ意見を頼みに来て、その真意を知ります。
助六があちこちで喧嘩を起こすのは、刀を詮議するためなのでした。
意休は助六の本心を見透かし、兄弟団結して親の敵を討てと意見をし、香炉台を切って見せます。
その刀こそ友切丸で、意休こそ伊賀の平内左衛門という盗賊だったのです。
はやる助六を、揚巻は意休の帰り際を待つようなだめるのでした。
ーー幕ーー
この後、水入りの場がつく場合があります。
意休を討った助六は、揚巻の気転で、刀を持って吉原を抜け出します。
私のツボ
若者 VS 年寄り
先ずは、このカードの前KN175と、2枚に分けて描くことを考えました。
この演目は、助六の衣装で前半と後半に分けられると思います。
お馴染みの黒の着付姿は前半で、紙衣姿は後半。
立役の前半と、和事の後半。
前半は華やかで賑やかなお祭りのような群像劇、後半は一転して静かな吉原で繰り広げられる助六・揚巻・意休の三人の物語ともいえます。
三人の物語というより、助六と揚巻の若い恋人と、それを邪魔する因業爺の意休という二対一の図式です。
前半はギャラリーが多く、なかなか二人きりになれなかった助六と揚巻ですが、後半は二人の色模様も垣間見られます。
しかも、実は助六は曽我五郎である。盗まれた曽我家の宝刀を意休が持っている。意休は助六の正体を知っていた。
と曽我もの要素が前面に出てきます。
さらに、平家の残党・意休が助六に共に頼朝を討とうと打倒源氏を “吉原”でそそのかすというのは荒唐無稽な感じですが、それほど曽我物に人気があったのかと思わせます。
もう一つ、やはりこの演目の魅力は、吉原の賑やかな情景と、助六と揚巻という粋なカップルなのだと思います。
若くて粋な恋人たちが、金持ちのジジイに立ち向かう。
金も権力もないが、俺たちにゃ愛と若さがあるぜ、かかって来やがれとROCKなスピリットがこの演目の要ではなかろうかと私は思います。
というわけで、助六・揚巻 VS 意休 を描きたく、この構図になりました。
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