KNPC125 吉野川(よしのがわ)

かぶきねこづくし

描かれている人物

赤枠
(左から)定高(さだか)、雛鳥(ひなどり)、久我之助(こがのすけ)、大判事清澄(だいはんじきよすみ)


(左から)定高(さだか)、大判事清澄(だいはんじきよすみ)、久我之助(こがのすけ)

絵の解説

定高、雛鳥(原画)

定高(さだか)

太宰少弍(だざいのしょうに)の後室。

雛鳥(ひなどり)

定高の娘。久我之助と恋仲。

久我之助(修正前)、大判事(原画)

久我之助(こがのすけ)

大判事清澄の息子。雛鳥と恋仲。

紫の衣装を黒の紋付に修正。
紫の衣装は「小松原」の場のものです。

修正後の久我之助の衣装(原画)

大判事清澄(だいはんじきよすみ)

大判事清澄の息子。雛鳥と恋仲。

流れる吉野川

吉野川(原画)

雛鳥の首を抱えた定高。
雛道具に乗せて久我之助の元へ輿入れさせようとしています。
大判事は弓を使って輿入れ道具を手繰り寄せています。
後方は瀕死の久我之助。

あらすじ

本外題 妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)

設定
・舞台右手は紀伊国(きのくに)の背山(せやま)、大判事の領土
・舞台左手は大和国(やまとのくに)の妹山(いもやま)、定高の領土
・中央の吉野川の上流には、それぞれの下館(しもやかた=別宅)がある
・吉野川の下流にはそれぞれの本館がある

背景
・定高と大判事は領地の境界を巡って敵対している。
・蘇我入鹿が叛乱を起こして帝を追い出す。
・帝に仕えていた大判事は保身のため蘇我入鹿に仕えている。
・帝の寵姫の采女局(うねめのつぼね)は久我之助が匿っている。
・雛鳥と久我之助は相思相愛の仲

発端
・入鹿が吉野川下流にある太宰家の本館(定高の館)に来て大判事も呼びつける
・入鹿は、定高と大判事が仲が悪いのは見せかけで実は帝を匿っているのではと疑う
・理由は両家の子ども同士が相思相愛の仲だから
・その嫌疑を晴らすため、定高には雛鳥を入内させ、大判事には久我之助を家臣にするよう命じる
・子らが承諾したら枝を吉野川に流せと二人に桜の枝を渡す

物語

下館に謹慎中の久我之助と、彼会いたさに下館に来た雛鳥。
川岸から手を差し伸べあう二人。
そこへそれぞれの親の来訪が告げられます。

桜の枝を持った定高と大判事が両花道に登場します。
入鹿の命令に従って説得に成功したら桜の枝を川に流す、
説得に失敗したら花を散らした枝を流す、
と吉野川を挟んで申し合わせます。

しかし、二人は朝敵入鹿に従うつもりはなく、
定高は娘の操のために雛鳥の首を刎ね、
大判事は息子の忠義のため久我之助に切腹を許します。

相手の子供は助かるようにとの思いは水泡に帰したと知った二人。
せめて久我之助がまだ息のあるうちに嫁入りさせたいと、
定高は雛鳥の首を雛道具に乗せて吉野川を渡します。

二人は子の犠牲によって両家が和解できたことを嘆きます。
大判事は二人の首を入鹿に手渡すため、両脇に抱えて出立するのでした。

私のツボ

滝車(たきぐるま)

両花道に、満開の桜、舞台の上部一面に吊り下げられる桜。
そして何と言っても舞台中央の吉野川。
滝車という五本の円筒がくるくる回って川の流れを著します。
これが舞台に奥行きを出し、うねる水紋がややサイケデリックな様相を呈します。

滝車は幕開き、幕切れ、そして俳優さんが川での演技を見せるときなど要所要所でしか動きません。
ずっと回っていては目立ちすぎるとの配慮からだそうです。

やりきれない悲劇ですが、圧巻の舞台美術です。

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