KNPC175「助六曲輪初花桜(すけろくくるわのはつざくら)」その6 福山のかつぎ、くわんぺら門兵衛

かぶきねこづくし

描かれている人物

*描いている人物が多く、説明も長くなるので分割します。
福山のかつぎ、くわんぺら門兵衛(もんべえ)

絵の解説

ぶつかった二人。
この後、口論になる。
くわんぺらは帯がないので浴衣の腰を手で押さえています。
浴衣は白地に紺の染で、三筋格子(みすじごうし)に俳優さんの屋号にちなんだ文字が入ります。
福山のかつぎは緋縮緬の下りが自慢の江戸っ子です。

福山のかつぎ、くわんぺら門兵衛(原画)

あらすじ

役の説明

・福山のかつぎ
キリッといなせな饂飩屋の出前。
出前に行く途中、くわんぺらとぶつかって小競り合いになる。

・くわんぺら門兵衛
意休の子分。
芸者を買い占めて風呂に入ろうとしたら誰も来ないので、怒って外に出てくる。
遣手婆と言い合ううち、福山のかつぎとぶつかって口論になる。
名前の由来は「三国志」の関羽の関と、平あるいは片(いずれも読みは”ぺら”)をくっ付けたようです。
自分から「銭持(ぜぜもち)様だぞ」と言ってしまうあたり、彼の本質を表していると思います。

あらすじ

吉原仲之町、三浦屋の格子先。
吉原一の人気花魁揚巻(あげまき)の元へは髭の意休が子分をつれて通ってきます。
助六の喧嘩沙汰を心配した母満江と白酒売りになった兄の十郎は、揚巻のところへ意見を頼みに来て、その真意を知ります。
助六があちこちで喧嘩を起こすのは、刀を詮議するためなのでした。
意休は助六の本心を見透かし、兄弟団結して親の敵を討てと意見をし、香炉台を切って見せます。
その刀こそ友切丸で、意休こそ伊賀の平内左衛門という盗賊だったのです。

はやる助六を、揚巻は意休の帰り際を待つようなだめるのでした。
ーー幕ーー
この後、水入りの場がつく場合があります。
意休を討った助六は、揚巻の気転で、刀を持って吉原を抜け出します。

私のツボ

二人の楽しい言い争い

個性豊かな面々がたくさん出てきて、それぞれ甲乙つけ難い魅力があります。
吉原によくいるタイプの人々が戯画化されており、それぞれ担当する柄が異なります。

福山のかつぎは軽やかな足取りで、チャキチャキの江戸っ子担当です。
くわんぺらは、威勢だけの弱いチンピラ担当といったところでしょうか。

その二人の言い合い、悪態の応酬が面白く、聞いていて楽しいです。
いつだったかの観劇の際、二人のやり取りの場でふと助六を見ると、背中を向けて座っていました。
気配を消して、二人の見せ場が目立つようにしているのかしらと思いました。

というわけで、二人の出会いの瞬間を描きました。
くわんぺらといえば、うどんを頭にかけられる場面も有名ですが、これは絵にすると面白くありません。
説明なしで、絵として見栄えが良いかどうか、を大切にしています。

おまけのお二人

鬘ありバージョンです。

くわんぺら門兵衛(原画)

子分の朝顔仙平から着替えを受け取り、お色直しした後のくわんぺら。
くわんぺらの鬘は鬢が三段になっている特徴的な鬘です。

自慢の緋縮緬の下りを見せつける福山のかつぎ。

福山のかつぎ(原画)

いつか上演される日(監修が通る日)のために描きためてあったもの。
いざ、カードにまとめる段になって選外になりました。
特にくわんぺらは、これだけだと誰でどういった状況なのか分かりにくいです。
くわんぺらは白い浴衣姿の印象が強いと改めて思いました。

ある程度、全体の構図を決めてから描かないと、結局お蔵入りが増えるだけなのですが、それでもつい描いてしまうのでした。

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