KNPC51 勧進帳(かんじんちょう)

かぶきねこづくし

描かれている人物

(左から)弁慶、冨樫、番卒、太刀持音若

絵の解説

飛び六方で花道を引っ込む直前の弁慶。厳密には幕がひかれる直前の瞬間。

原画

花横の観客は「キャ、来るわよ来るわよ」と飛び六方を待ち構えています。

この後、幕が引かれて舞台(富樫)に一礼、そして飛び六方です。
富樫見納めとも言えますので、富樫に熱い視線を送る観客もいます。
全ての事情を汲んで、義経一行を通した富樫。弁慶を見送りながら何を思うや。

あらすじ

主な登場人物と簡単な説明

・源義経(みなもとのよしつね)
源頼朝の異母弟。平家討伐に大きな功績があったが、頼朝に疎まれいったん九州に落ち延び、今は奥州の藤原秀衡(ふじわらのひでひら)を頼って移動している。

・武蔵坊弁慶(むさしぼうべんけい)
源義経の一番の家来。

・富樫左衛門(とがしざえもん)
加賀の国の豪族で、義経一行を捕らえるために設けられた「安宅の関(あたかのせき)」の関守。義経主従を捕える命令を受けている。

他、義経の四天王(亀井六郎、片岡八郎、駿河次郎、常陸坊海尊)、刀持音若、番卒などがいます。

あらすじ

兄の源頼朝に疎まれ、奥州へと逃れる源義経と家来武蔵坊弁慶一行。
武蔵坊弁慶たちは山伏姿、源義経は強力に変装し、東大寺再建の寄付集めの名目で安宅の関を突破しようとしますが、関守の富樫左衛門に怪しまれ、詮議を受けます。

本物の山伏か怪しむ冨樫。
弁慶は勧進帳を読み上げ、山伏問答もこなします。
番卒に強力が義経に似ていると指摘され、弁慶は義経を打ち据えます。
その姿に胸を打たれた冨樫は関所を通る許可を与え、一旦立ち去ります。

主君を打ち叩いた罪に涙する弁慶を義経は慰めます。

関を去った一行を、冨樫が追いかけてきて酒を勧めます。
酔った弁慶は延年の舞を舞い、義経と家来たちを先に行かせます。
そして自分も飛び六方で花道を引っ込みます。

私のツボ

この直前の弁慶

延年の舞を舞いながら、義経と四天王に立ち去らせる弁慶。花道を一列になって下がる義経と四天王。

「どこじゃ?かぶきねこさがし1」(講談社刊)より 原画

舞台では弁慶も富樫ももっと離れています。

弁慶も踊りながら笈(おい)を背負い、金剛杖を手にして立ち去る支度を整えます。
ここが緊迫感があって非常に好きです。
舞台を観ていてうっかり寝てしまうこともありますが、延年の舞で大体目が覚めます。
身支度を整えて弁慶は花道七三へ、富樫は右手をあげて見送ります。

花道

花道は歌舞伎独自の舞台設備ですが、舞台全体を描くとき、花道が良いアクセントになります。
舞台全体を正面から描くと、どうしても横長の構図になり、平面的になってしまいます。
演目によってはそれが魅力になるものもあります。
「寿曾我対面」などは、豪華な衣装を着た登場人物がひしめき合っており、その密度の高さが賑やかさを醸し出します。

賑やかさではなく、静かな味わいを出したい場合は、花道の線を斜めに入れて奥行きを出します。
客席を描くと、これまた別の面白みが出ます。

厳密には花道と舞台の比率が違うことがあります。絵画ですから全体のバランスに重点を置いています。製図ではないのでパッと見の印象が大事だと思っています。

コメント

  1. miyuki より:

    いつも楽しく拝見しています。
    私、『勧進帳』でもこの場面の、弁慶が踊りながら「早よ行け」みたいに扇と手でサッサッとやる仕草のところが好きです。

    • gatodamo_001 より:

      コメントありがとうございます。大変嬉しいです。
      とくとく立てや、私もこの場面が大好きです。義経一行が引き上げるところ、何度見ても緊張します。