KNPC124 太刀盗人(たちぬすびど)

かぶきねこづくし

描かれている人物

後方:(左から)従者藤内(とうない)、目代丁字左衛門(もくだい ちょうじざえもん)
手前:(左から)すっぱの九郎兵衛(くろべえ)、田舎者万兵衛(まんべえ)

絵の解説

刀の説明をしながら二人が一緒に連舞(つれまい)を踊っているところ。
万兵衛の真似をして踊るので、九郎兵衛は万兵衛をチラチラ覗き見しながらワンテンポ遅れて踊ります。

まず目を引くのが九郎兵衛の泥棒メイク。
眉毛の形は俳優さんによって異なりますが、青々とした顎はお約束のようです。

とぼけた味わいの目代爺さんですが、衣装は孔雀の羽根模様と洒落ています。

太刀盗人(原画)

万兵衛と従者の衣装の色や柄は俳優さんによって異なります。

あらすじ

主な登場人物と簡単な説明

・すっぱの九郎兵衛(くろべえ)
素破(すっぱ=詐欺師、すりのこと)。

・田舎者万兵衛(まんべえ)
訴訟のために田舎から都へ来た。

・目代丁字左衛門(もくだい ちょうじざえもん)
都の警護役

・従者藤内
目代の従者

あらすじ

所用で田舎から都に来た万兵衛は、帰郷する前に土産を買おうと市にやってきます。
すりの九郎兵衛に刀を奪われそうになり、騒ぎになります。
通りかかった目代が二人を取り調べますが、九郎兵衛は万兵衛の言葉を盗み聞きして同じように答えるので埒があきません。
盗み聞きに気付いた目代は、わざと万兵衛に小声で答えさせます。
聞き取ることができなかった九郎兵衛は、盗人であると露見します。
目代たちが、九郎兵衛が着ている壺折を脱がせると背中一杯に盗んだものをぶら下げていました。
しかし抜け目ない九郎兵衛は、太刀をまたもや奪いとり雑踏の中へと逃げていくのでした。

私のツボ

元ネタ「長光」

元ネタは狂言の「長光」で、長光の刀を巡って同じ展開が繰り広げられます。
太刀盗人では「正宗」です。
狂言では、盗人は黒くて長い髭をたくわえています。
狂言は鬘も被りませんし、メイクもしないので、初めて観た時は驚きました。
明らかに怪しすぎる。
「太刀盗人」の九郎兵衛の青々とした髭の剃り跡も、あの豊かな黒髭ならやむを得ません。
青々したメイクの根拠が分かり、とてもスッキリしました。
私なりの根拠というか独り合点です。

「まずは、そろりそろりと参ろうか。」

田舎者万兵衛が市へ向かうところのセリフ。
怪しい九郎兵衛に対して、人の良さそうな万兵衛。
つい派手なメイクの九郎兵衛に目がいってしまいますが、全体がドタバタコントにならず、”楽しい松羽目物”を逸脱しないのは万兵衛とのコンビネーションのおかげなのだろうと思います。
やりすぎず、抑えすぎず、松羽目物は難しいだろうなと思います。

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