描かれている人物
お光(おみつ)
絵の解説
久松と自分の祝言の膾(なます)を作るため大根を切っているところ。
余白が多い構図ですが、KNPC25のお染同様にお光ちゃんだけを描きたかったから。
着物の模様は俳優によって異なりますが、地の色は浅葱です。
黄八丈(きはちじょう)の前掛。
浅葱色の着物、黄八丈柄は庶民の娘の典型的な衣装です。
あらすじ
あらすじはKN25お染に書いています。
こちらでは物語の成り立ちなどについて書いています。
本外題 新版歌祭文(しんぱんうたざいもん)
作者 近松半二(ちかまつはんじ)
人形浄瑠璃の作品を歌舞伎化したもの。
丸本歌舞伎(まるほんかぶき)とも呼ばれます。
歌祭文とは、時々の話題になった事件や風俗をつづった文章のことで、
門付け芸人が三味線などに合わせて歌って歩きました。
門付け芸人は、家の戸口で芸を披露して御祝儀をもらいます。
江戸前期、大坂で実際に起きた心中事件を元に歌われた
お染久松の物語が大人気になります。
新版とはその名の通り、New versionのことで、
近松半二がお家騒動などを盛り込んで上下二巻の長編作品を書き上げました。
そのうち、お光を中心とした「野崎村」のみが歌舞伎では上演されます。
お染久松は悲恋の恋人としてさまざまな物語が書かれ、
本作はその代表作です。
鶴屋南北が書いた
「KN165、KN178於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり)」
などがあります。
私のツボ
本物の菜切り包丁
大根を切りながら指を切ってしまったり、紙を折ったもので眉毛を隠してみて人妻になったときのことを想像してみたり、久作にお灸をたんまり据えたり、とにかく忙しい。
素直で健気で、孝行娘で、快活な可愛いお光ちゃん。
お染ちゃんとの可愛さとはまた違うベクトルの可愛さです。
可愛さの位相が異なるので、どちらも等しく可愛い。
描きたい姿はたくさんあるのですが、大根に絞りました。
四代目中村芝翫さんが演じたお光ちゃんが豪快にスパスパ大根を切る場面が印象に残っているので。
四代目芝翫さんのお光に、四代目雀右衛門さんのお染、久作は中村富十郎さん、久松は三代目中村鴈治郎(四代目坂田藤十郎)、下女およしは二代目中村吉之丞さん。
初めて観た野崎村。
その後、何回か野崎村は観ていますが、今でもよく覚えています。
出過ぎず、やり過ぎず、全体のバランスが非常に取れた舞台でした。
強烈なキャラクターがぐいぐい前面に出てくる演目も楽しいですが、芸と芸の心地よいアンサンブルに身を委ねられる演目が観たい今日この頃です。年をとったのかしら。
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