描かれている人物
お静の方、井伊大老
絵の解説
井伊直弼が「次の世も又次の世も決して離れまい」と、お静の方を抱き寄せるところ。
雛人形
この古びた雛人形を手に、慎ましくも楽しかった彦根の埋木舎(うもれぎのや)での暮らしを懐かしむ二人。ここがジーンと胸に沁みます。
この立雛は、五段の雛壇の一番下に飾ってあります。
原画を描いていたときは、丸窓に立雛、禅師が「一期一会」と書き記した笠を配置しようかと思っていましたが、どうも説明的で面白くないのでパソコン上で大幅に変更しました。
桃の花を下に移動して、背後の雪は、「袖萩祭文」から拝借。
あらすじ
北條秀司 作
主な登場人物と簡単な説明
・井伊大老(いいたいろう)
安政の大獄の中心人物
・お静の方(おしずのかた)
井伊直弼の側室
他に仙英禅師、宇左衛門、雲の井などがいます。
あらすじ
序幕 : 井伊大老上屋敷奥書院 / 桜田門に近い暗い濠端 / 元の奥書院
開国か攘夷かで国中が揺れる幕末安政年間。
江戸は安政の大獄の騒乱に包まれています。
井伊直弼に暗殺未遂事件が起こります。
犯人は旧友の水無部六臣。
混乱の中、お静の方との間に生まれた鶴姫の訃報が届き、直弼は号泣するのでした。
*この場は上演されないことがあります
第二幕 : 井伊家下屋敷お静の方の居室
暗殺の危機にある大老井伊直弼は、愛妾のお静の方のもとを訪れます。
今日は二人の娘、鶴姫の四度目の月命日。
二人は静かに桃の節句の宴を始めます。
自らの苦悩を吐露する直弼と、直弼の生き方を後押しするお静の方。
季節外れの雪が降るなか、静かに更ける雛祭りの前夜、桜田門外の変の前夜。
私のツボ
「来世は間違っても大老にはなるまい」
このセリフを直弼が呟いて幕。
源蔵の「せまじきものは宮仕え」に通じるものがあります。
薄暗い照明の中ほのかに雛壇の緋毛氈がぼんやりと浮かび上がります。
派手さはありませんが、しっとりとした名作です。
この後、桜田門外を上演する場合もありますが、このお静の方の居室で終わる方が私は好みです。
全てを語るなかれ。
大好きな演目ですが切なくて胸が苦しくなるのでたまに観る程度がちょうど良いです。
歌舞伎の雛祭りはどれも悲しい物語が多いです。
コメント