AKPC70「江島生島(えじまいくしま)」

もうひとつ

描かれている人物

赤枠左:生島新五郎
赤枠右:江島に似た海女
下:(左から)生島新五郎、江島

絵の解説

小袖に手を通し、ポーズを取る海女。

江島を想い、小袖にすがる狂乱の生島
片肌を脱ぐのは狂乱もののお約束。

夢の中、江島と生島の逢瀬。
生島の幻影。

水紋

あらすじ

主な登場人物と簡単な説明

・生島新五郎(いくしましんごろう)
山村座の歌舞伎役者。
江島と恋仲になり、三宅島に流罪となる。

・江島(えじま)
江戸城大奥の中臈(ちゅうろう)。
歌舞伎役者の生島と恋仲になり、流罪となる。

・海女(あま)
三宅島の娘。江島に似ている。

他、旅商人などがいます。

あらすじ

長谷川時雨 作
江戸城大奥の中臈・江島と、山村座の歌舞伎役者の生島新五郎は恋仲となるが、
幕府の知るところとなり大スキャンダルとなる。
生島は三宅島へ、江島は信州の高遠へ流罪となる。

江島が忘れられない生島は物狂いとなり、
夢の中で江島との逢瀬を楽しむ日々を送る。

ある日、江戸からの旅商人相手に、人気役者だった過去を語る生島。
そこへやってきた海女たちの一人を江島と錯覚し、舞に興じる。
やがて海女たちは立ち去り、ひとり浜辺に残された生島は小袖を抱きしめる。

私のツボ

夢と白昼夢

江島との逢瀬の夢から覚めたら、江島によく似た海女がいた。
夢かうつつか幻か、
江島に似た海女が現実にいるが、それは江島ではないという現実がただ残された。
そして、小袖と、赤い椿の花と。

「俊寛」の千鳥のような、屈託のない”江島に似た海女”の無邪気さが
かえって残酷で、生島の悲しさをより深めてしまう。

前半の江島と後半の海女、顔は似ていても住む世界は正反対の二人の女。
その女に翻弄される生島、夢と現実のはざまを揺蕩う生島、という構図。

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